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スーパーホテル業務委託契約書の全貌 #1

「今後の予定A」の通り、本社研修と合わせて行われる調印式前までの9月5日から10日の5日間のことです。我々は、ホテルにこもって「サンプル契約書A・B・E・F」をよく読み直しました。

「今後の予定A」氏家さん・渡邉ペア スケジュール(変更計画)

「今後の予定A」氏家さん・渡邉ペア スケジュール(変更計画)

その結果、我々に19時間30分のシフト業務をこなす「ロボットになれ」と読めたのです。しかも「時給換算577円」でやれと、サンプル契約書の資料は語っていました。この当時の最低賃金は、東京都が958円でした。すぐ10月に985円に上昇します。なお、上野地区の時給相場は1350円でした。

我々は、最低賃金の約60%、時給相場の約43%しか委託報酬がありません。要するに我々が労働提供して穴埋めしろというものだったのです。

ホテル業務委託契約書

「自由な裁量のある独立した事業者」でないことが、この契約書で明確にわかります。ゆえに、この契約書は皆さんに公開する必要がありました。これはまさしく「奴隷契約書」だからです。

サンプル契約書A(ホテル業務委託契約書)1条~3条

サンプル契約書A(ホテル業務委託契約書)1条~3条(2)

第1条(1)の業務は、スーパーホテルの「正社員の業務」です。我々が自由にホテルを委託されて運営するのではなく、「正社員の業務」を委託したというただの“偽装業務委託”でした。15項目の業務のうち、一般的な発注内容がほとんど明記されておらず、スーパーホテル独自の用語ばかりです。「自由な裁量のある独立した事業者」に発注する業務でないことは、つぎのことからもわかります。

なお、第1条(2)では、内容すら不明な業務を「ホテル運営のすべての業務」と記載することで包括的契約としています。

1 朝礼・フェイスアップ業務

なぜ、独立した事業者に朝礼を課す必要があるのでしょうか、しかもスーパーホテル社員の行動指針であり、経営理念を強制されるのでしょうか。

5 売上金等現金管理・経理処理業務

このうち経理処理業務は、財務が独立していない証拠であり、スーパーホテル代表取締役社長の通帳に入金しています。

6 顧客拡大業務

広告宣伝を我々が請負っているかのような言葉です。

10 品質向上業務

これは何の業務なのでしょうか?

11 防火維持管理業務

防火管理者の氏家さんに消防法上の全権があり、業務指定されるはずがありません。また、氏家さんに知らせず消防設備の点検が他業者委託されており、危険な「防火維持管理業務」だとスーパーホテルは指摘されています。2022年3月16日参議院総務委員会で明確に「違反認定」されています。

12 水質管理業務

何をするのかも知らされておりません。

13 駐車場管理業務

そもそもありません。

14 自動販売機等サービス対応業務

何をするのかも知らされておりません。

15 宅急便取扱業務

取扱者はスーパーホテルで我々は契約さえなく、店舗にあったからやらされました。

第2条1項には、スーパーホテルの「経営理念、経営方針、営業施策等を遵守のうえで履行する」と記載しており、我々が「自由な裁量のある独立した事業者ではなく、スーパーホテルの正社員」なのだと思わせています。また、同条2項にはその業務の履行方法について、「スーパーホテル業務要項」を遵守しろと記載されています。

そして、同条4項には、同条1項と2項の「スーパーホテル社員の業務」が我々の“連帯債務”だとしています。事実、提訴後、我々はスーパーホテルより約3700万円ものスラップ訴訟を受けており、このうち約2700万円がこの契約に基づく売上賠償となっています。

加えて、同条5項には、スーパーホテルより「金銭債務」があると書いていますが、何が債務なのかわかりません。

第3条(禁止事項)には、挙げたらきりがありませんがつぎのようなことが禁止事項となっていました。

(12)法令、条例及び甲の宿泊約款・利用規約に違反する行為

消防法違反の運営を我々に強要することは違法ではないのでしょうか。

第8条には、スーパーホテルが自由にマニュアルを改廃することができることになっており、我々には解約する以外に拒否できないものとなっていました。

つまり、スーパーホテルが「スーパーホテル業務要項」のマニュアルを改変して業務の「ボリューム」と「種類」を増やし続けることができ、その業務をすべて処理できないとスーパーホテルに金銭賠償しないと行けない契約なのです。

第4条、第5条、第27条は、我々が説明会などで確認した「確認事項」に関するもので、スーパーホテルが嘘をついたものでした。

7条には、強制したい事項が書かれています。

第7条の項目

  • (1) 我々二人が開業して給与支払い事務所届などを出せ
  • (2) (1)の届けた証拠の写しを提出しろ
  • (4) 配属ホテルの住所に転入しろ
  • (5) 防火管理者と食品衛生責任者を取得しろ
サンプル契約書A(ホテル業務委託契約書)7条 (抜粋)

サンプル契約書A (ホテル業務委託契約書) 7条(抜粋)

(1)は、氏家さんは社長です。個人事業主の開業する意味がありません。また(2)は、個人情報の提供を強要するものであり、そもそも我々が開示する必要ある情報ではないはずです。

さらに(4)は、日本国憲法22条「居住、移転・職業選択の自由」の侵害に当たります。日本の住所は「住民基本台帳法」の第1条につぎのように定められています。

この法律は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とする (後略)。

「事務の処理の基礎」の通り、「個人」が公的サービスを受ける起点です。参政権の「投票用紙」や健康保険など住所地の行政機関が対応しています。それ以外にも行政機関のサービスは、現住所でないと受けられない構造です。従って、ホテルを現住所とすると、「個人」の行政サービスなど受ける権利だけでなく、「個人事業者の事業所地」も同じなので、スーパーホテルの支配が及びます。

たとえば、日本の郵便は法律で郵便物の宛先人以外の人が勝手に開封すると刑法で罰せられます。また、手紙を宛先人以外の人が長期保管するのも犯罪です。しかし、スーパーホテルの住所と現住所が同じなので、スーパーホテルは我々の郵便物を長期間放置して勝手に開封していました。

我々の提訴後、行政機関から氏家さん宛に送られた郵便物がスーパーホテルにより勝手に開封されています。これによって、スーパーホテル側弁護士は「開封しないと知り得ない情報」に基づいた書面を送りつけて来ました。

第9条、働けない場合には「スーパーホテル社員」を1日3万円+大阪本社からの交通費を代行要員として派遣するから払えというもの。

第11条には、1週間以上の「通院」や「入院」、「妊娠」したら報告する。この報告義務は「もはや独立した自由な裁量のある事業者」ではなく、人権侵害そのものではないでしょうか。

第12条には、この業務委託契約で知り得たすべてを秘密にすること。

第18条には、この業務委託でスーパーホテルが損害を受けたら、我々は賠償することになっていました。それゆえ、スーパーホテルの違法行為を記者会見した理由で、約3700万円もの賠償請求のスラップ訴訟を受けています。

第19条の中途解約する場合、我々が毎月の委託料より10万円ずつ15回も差し引かれた保証金150万円がスーパーホテルに全額没収され、追加の賠償請求もできることになっています。

第21条1項には、我々がつぎのようになると解除できました。

第21条1項の項目

  • (1) 「スーパーホテル業務要項」のスーパーホテル社員の遵守事項に我々が従わない
  • (2) スーパーホテルが指定した評価基準に達しない
  • (3) 我々のうち1人でも働けない。ただし「産前6週間と産後8週間」以外は解除対象

サンプル契約書A (ホテル業務委託契約書) 21条(抜粋)

(3)の妊娠直後から「産前6週間まで」と「産後8週間」の経過後は、解除対象です。文字通り「妊娠したら解約できる」ことになります。性差別、女性蔑視、人権侵害そのものです。それどころか妊娠したら働けないほどの激務だと、スーパーホテルの採用サイトで紹介するほどでした。

人権侵害が公然と書かれるスーパーホテルの採用サイト

この契約書のあらゆる所に矛盾と嘘があり、きりがないほど指摘ができる状態であり、本当にひどいものでした。

スーパーホテル業務要項

「1.総則」には、驚くほどたくさんのマニュアルがあり、それを総称して「スーパーホテルマニュアル」と呼ばせていました。下の写真の通りです。

サンプル契約書B(スーパーホテル業務要項)「1.総則」(抜粋)

サンプル契約書B(スーパーホテル業務要項)「1.総則」(抜粋)

上の写真の通り、「スーパーホテルマニュアルに従い、その他の場合は、甲の指示に従います。」とあり、もはや我々は、何を指示されても服従するしかない状態でした。

業務委託契約書もそうでしたが、「(1)朝礼・フェイスアップ業務」には「研修導入と研修ルール」で紹介したように「社員の行動指針」の“経営理念”をコンパクトにまとめた「Faith(フェイス)」を読み上げる業務があり、その通りに行動することが義務づけられていました。

「2.業務基準」には、スーパーホテル社員と業務委託の支配人・副支配人が同じ業務を行っている証拠です。

スーパーホテルチェーン全体として顧客に対して同一種類・水準のサービスを提供するため「ホテル業務委託契約書」に定める業務委託期間中、業務要項に添付した別紙記載の甲が定める「支配人ライセンス評価表」(20 1 8年4月制定)

※甲=スーパーホテル、「スーパーホテル業務要項」の2.業務基準より抜粋

なお、「2.業務基準」に登場する「支配人ライセンス評価表」は、「突然はじまった契約書の読み合わせ」では配布されておらず、内容が不明でした。最後の本社研修の「ライセンス」で詳しく説明したいと思います。

13.防火維持管理要項には、「1.乙ら(我々)は、本件ホテルの防火維持管理のために、常時2名以上を館内に常駐させます」となっており、24時間の交代シフトを編成しなければなりませんでした。

サンプル契約書B(スーパーホテル業務要項)13.防火維持管理要項 (抜粋)

サンプル契約書B(スーパーホテル業務要項)13.防火維持管理要項 (抜粋)

最低1名が常駐する体制を見積もると」で書いたように1名常駐の人件費は、年間9,004,185円です。その2倍なので約1,800万円が必要です。しかし、「報酬内訳【JR上野入谷口(69室)】」の税抜き報酬は10,848,000円でしかありません。つぎのような状態でした。

サンプル契約書F(報酬内訳【JR上野入谷口(69室)】)

サンプル契約書F(報酬内訳【JR上野入谷口(69室)】)

「最低1名が常駐する体制を見積もると」の1名常駐体制=約900万円

約1,800万円-約1,084万円=▲約716万円不足(全体比40%)

つまり、法令遵守する常駐2名体制の委託料は支払わないが、「我々2人が24時間働いて、どうにかしろ」とスーパーホテルは契約書で語っていたのです。

なお、税抜き報酬を法定労働時間で換算した時給は「577円=1,084万円÷365日÷(17時間+7時間×1.25深夜割増)÷常時2名体制」でした。

「20.研修・会議要項」の2には、スーパーホテル業務委託契約で「候補者(研修生)」を研修させる義務がありました。スーパーホテルJR新大阪や上野御徒町が我々の研修店舗となった理由がここにありました。また、3には「各種会議」への出席義務が定められています。

サンプル契約書B(スーパーホテル業務要項)20.研修・会議要項(抜粋)

サンプル契約書B(スーパーホテル業務要項)20.研修・会議要項(抜粋)

証拠・資料