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だますために「嘘の求人広告」をしていた #5

2018年8月20日、研修委託店の最終日のことです。

芝原次長、それに部下のスーパーホテルコンサルタント本部東日本エリアの中本係長が、突然、ホテルにやって来ました。このとき、我々はホテルを「独自運営」していました。“昼パートの私”と“夜パートの氏家さん”の勤務が重なる時間帯は、毎日13時から17時です。ちょうど、彼らが来たのがこの時間帯でした。

たしかフロント営業開始の15時にホテルをオープンして、チェックインする来客者がいなかったので、我々は事務室で事務処理を行っていました。そうしたところに輔野支配人が「芝原さんと中本さんが来たので行って下さい、仕事は大丈夫ですから」と言って、事務室に入って来ました。

私の父の葬式が8月16日だったので、ちょうど4日後のことでした。

突然はじまった読み合わせ

我々は、ロビーの4人がけのテーブル席へ行って、会話したのを覚えています。おそらく16時くらいから、彼らと打合せをはじめたと思います。とても長い打合せで、2時間以上の内容だったと記憶しています。

我々が席につくと、芝原次長が“ニヤついた顔”で中本係長を促して「このたびは、ご愁傷さまです。」と言いながら、2人は軽く頭を下げました。私は「どうして、この人は笑っているのだろう(芝原次長)」と思いました。

このときのメモを私は残しており、芝原次長らの説明内容が判明しています。

芝原次長は「契約書の読み合わせをします」と言って、中本係長に目配せしました。すると中本係長は、うすく“サンプル”と斜めに印刷された、つぎのような「サンプル契約書」などを我々に差し出しました。

芝原次長は、「A.ホテル業務委託契約書」と「B.スーパーホテル業務要項」の2つの契約書の全ページを読み上げはじめました。我々は、芝原次長が読み上げるのを目で追いかけます。

「A.ホテル業務委託契約書」を読み終わると、芝原次長は隣にいた中本係長に向かって「ちょっと厳しい内容だな、何が書いているのかわからないな」と意味不明なことを言いました。そして、芝原次長は「B.スーパーホテル業務要項」を続けて読み上げます。

スーパーホテルに従うしかない状況だった

芝原次長が「B.スーパーホテル業務要項」を読み終えると、つぎの会話となりました。

芝原次長質問などありますか?

氏家保証人が連帯保証人に変わっているんですけど、どうしてですか?

説明会で橋本課長代理に事業の連帯保証人はいないから、わざわざ保証人について質問したんですけど。そしたら就職の際の身元保証程度ですと、彼女は言いましたよ

芝原次長ちょっと確認します。(特に驚く様子もなくメモした)

我々は“事業の連帯保証人がいない”からこそ、わざわざ説明会で確認したのです。「A.ホテル業務委託契約書」の第27条には「連帯保証」が定められており、「A.ホテル業務委託契約書」の最終ページに「連帯保証人」の記入欄が2人分ありました。

2018年4月21日、我々が説明会で確認した「確認事項」は、完全に違うものとなっていました。

芝原次長は、我々に「個人情報保護に関する誓約書・レンタルユニフォーム取り扱い合意書・本社研修時間割【氏家・渡邉ペア】」を“あとで読んで下さい”と言って省略しました。そして、中本係長に続きを説明させます。中本係長は、“我々を部下のように”つぎのことを指示したのです。

中本係長お二人は9月2日~4日の3日間で、スーパーホテルJR上野入谷口の競合ホテル3ヶ所の試泊をお願いします。その間、お二人の「転入届」と「印鑑証明」を台東区に届出て下さい。

芝原次長競合試泊はアーバンホテル、アパホテル、ドーミーインやな

中本係長台東区への届出は最優先なので、終わり次第に連絡を下さい。渡邉さんは食品衛生責任者を取ったので、氏家さんも防火管理者をこの3日間で取る予定ですよね。あと、着任予定のJR上野入谷口ですが、店舗のアルバイトも引き継いで頂きます。

我々・・・・(ショックで無言)

中本係長報酬は「ワークスケジュール」に基づいて、この紙「報酬内訳【JR上野入谷口(69室)】」の通りとなります。

氏家あのう、それより今日までの日給と交通費などの精算はどうしたら良いですか?

芝原次長ああ、本社に送って下さい。御徒町(研修委託店)から宅急便で送ってもらえれば、処理しますから。

事実、私は台東区への転入手続き後に氏家さんの手続き予定も合わせて、中本係長にショートメールで報告を入れています。

中本係長による公的手続き進捗確認メール

中本係長による公的手続き進捗確認メール

ビジネスホテル業界で“5本の指に入る”スーパーホテルは、「詐欺」によって運営されていることを、この日に我々は知りました。我々が芝原次長らに対して、取り乱して抗議しなかったのは「失格」になれない状況だったからです。

それは、日給や交通費などの精算方法を質問した氏家さんの言葉からわかります。

我々が立替払いする経費と日給は、「スーパーホテルが許可しないと精算できない」状態だったのです。事実、精算内容を表にまとめると、つぎの通りになります。特に「サンプル契約書A~G」を公開した8月20日が精算の区切り目となっていること。また、9月14日の「調印式」後、故意に支払いを引き延ばし分割精算しています。

スーパーホテルの日当などの精算内容

スーパーホテルの日当などの精算内容

しかも、我々の経済状態や家庭の事情などを選考過程からずっと把握して来たのが、芝原次長と高森次長でした。氏家さんの場合は、お父様が認知症で寝たきり、それに胃ろう手術を受けて入院していました。入院中の病院が建替工事となり、転院を通告されます。しかし、転院先の病院と新規の入院手続きには、いくつか必要なものがありました。それは、氏家さんとお父様の現住所です。スーパーホテルの指示に従って、都営アパートを退去して現住所がなくなる寸前でした。お父様の高齢者医療サービスを受けるには、市区町村の役所に届出手続をしないと行けません。東京都より8月末の転出が求められており、新住所がないと公共サービスすら受けられなかったのです。

さらに氏家さんのお父様を受け入れる病院は、氏家さんの「保証能力」を要求していました。氏家さんが無職で現住所、保証金がなければ、入院拒否される状況だったのです。氏家さんは父の命にも関わる状況で、現住所と収入を失う「業務委託契約の拒否」は不可能でした。

事実、9月19日の業務委託契約開始の初日、氏家さんが埼玉県の病院にレンタカーで行きました。そして、県内の病院間を氏家さんがお父様を介護タクシーで運んでいます。

私の場合もひどいものでした。8月9日の父親の急死から16日の葬式まで、スーパーホテル上野・御徒町での研修で拘束されています。父の葬儀の手伝いに行く時間さえなく、葬式に顔を出す程度でした。家族や親類より絶縁状態に置かれてしまいました。

所持金をほとんど持たない孤立無援なホームレスのまま、スーパーホテルの指示に従う以外に生活する術が、それゆえに我々にはなかったのです。

スーパーホテルによる詐欺だった

説明会や求人広告によって、我々はつぎのような「スーパーホテルの嘘」でだまされていたことを知ったのです。

スーパーホテルの「詐欺」の証拠

  • アルバイト人件費と消費税が1,100万円に含まれていた
  • スーパーホテルのアルバイトを引き継ぐよう指示される
  • 契約期間は4年から1年に変わる
  • 「A.ホテル業務委託契約書」は「個人④(新人)」の社内コードつき定型書式
  • 「B.スーパーホテル業務要項」はVEN契⑤業務要項(個人)」の社内コードつき定型書式
  • スーパーホテルJR上野入谷口の住所で住民票と印鑑証明を届け出る
  • 身元保証人から事業の連帯保証人に変わる

委託報酬とは別にアルバイト補助金があると、スーパーホテルのホームページにも紹介されていたし、説明会では橋本課長代理が「別途支給」と明言していました。

株式会社スーパーホテル求人サイトのよくあるご質問『業務内容について』(拡大)

株式会社スーパーホテル求人サイトのよくあるご質問『業務内容について』(拡大)※現在は削除されています。

また、スーパーホテルのアルバイトを強制的に引き継ぐ指示は、我々の報酬に「使い道」を決めていることになります。

報酬内訳

報酬内訳

さらに契約期間が4年から1年に変わっていたのです。「4年で3,000万円たまる仕事」という前提が崩壊していました。

おまけに「A.ホテル業務委託契約書」と「B.スーパーホテル業務要項」には、両方とも「社内コードつき定型書式」だったのです。求人広告する時点で、別の契約書が存在する事実になります。つまり、スーパーホテルは、組織的に長年にわたり、この「詐欺」によってチェーンを維持して来たのです。

氏家さんは、つぎのように私に言いました。

警察に行っても、詐欺では動かないよ。それに弁護士に相談したくとも金がないしね。だまされて家や車を処分したなんて、お前がバカなんだで終わりだよ。

私は、この日の昼パート終了後、不愉快ですぐ寝ました。翌日、我々は研修委託店をチェックアウトし、自分たちでホテルに3日間、宿泊しました。