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スーパーホテルは研修実態の漏洩を恐れた #2

午前10時すぎ、我々はJR新大阪駅構内を歩いていました。

2018年7月26日深夜、三輪室長に私が相談した件は、すぐ高森次長に伝わったようです。私が5時30分より「昼パート」で働くなか、9時頃氏家さんの携帯に高森次長より連絡が入りました。

高森次長は、スーパーホテルの本社で相談したいとのことでした。私は、三輪室長に指示された通りにしました。体調不良で病院へ行くと言って、氏家さんを付き添いにホテルを抜け出しました。

スーパーホテルの本社に着くと、高森次長に会議室に通されました。会議室において、事情聴取ではなく高森次長の意向が伝えられたのみでした。簡単に話をまとめると「1日待機して、27日に研修センターへ戻る」ことになりました。そして、高森次長よりホテルに戻って、翌日10時にチェックアウトするよう指示されました。

高森次長は、すぐ安井支配人を事情聴取したそうです。その日のうちに、高森次長より事情聴取の内容が携帯で知らされました。安井支配人の言葉は「嫌なら途中で言ってくれた良いのに・・・」というものでした。

私は、一般の社会常識がない人間でも働けるレベルの現実に失望しました。さらに驚くべきことに高森次長の言い方は、ケンカ両成敗に話が変わっていたのです。

三輪室長への報告

三輪室長への報告

翌日、高森次長と一緒に我々はホテルを出ました。

我々の顔には、怒りと不安が浮かんでいました。「4年で3,000万円たまる仕事」を獲得するため、高森次長ら面接官の言うままに「自宅を退居して家財も売り」、我々はスーツと着替えだけで大阪に来てしまいました。

被害届はモーニングセットで帳消し

高森次長は、我々をJR新大阪駅構内の喫茶店に連れて行きました。

ちょうど昼頃です。高森次長は「朝食はまだでしょうから、何でも注文して下さい」と我々に言いました。そう言われて、我々はモーニングセットを注文したのを覚えています。

我々は、警察へ「セクハラの被害届を出す」と告げました。すると高森次長は急に怒って、つぎのような会話となりました。

高森次長2人とも何しに大阪まで来たんですか!  事業再開するためでしょ!

氏家そうです。でも、これは研修の次元を越えた話でしょ。刑事事件じゃないですか。

高森次長私は、お二人とご縁があって採用しました。すでにお二人の配属ホテルまで決まってるんですよ。安井さんたちより、お二人には目的に向かう方が一番重要でしょ!

氏家高森さんたちの命令に従うのは、仕事だからわかります。でも、この話は別でしょ。

高森次長警察沙汰となると、スーパーホテルが困ります。だから、私にこの件を預けてもらえませんか、お二人を悪くしませんから、お願いします。

はあ?  業務中のセクハラを隠蔽したいと言ってるのですか?

高森次長そうではありません。このままだとお二人は研修が思うように進んでいないから警察に駆け込んだと、たくさんの業務委託の支配人に笑われますよ。

なんで、そうなるんですか?  我々の研修がここで終わると言いたいのですか?

高森次長そうじゃありません。私にセクハラの件を預けて下さいと言っているんです。

氏家高森さんたちはつぎの研修生のことを考えているんですか?

高森次長私は、お二人より少し長く生きています。だから、人生経験から言わせて下さい。今、警察に行っても、お二人のためにはならないです。お二人は目的に向かうべきです。配属先も決まっており、多くの人がお二人のために準備しています。我々の指示に従ってもらえないとすべてが無に帰します。このままお二人は、研修失格となりすべてが終わりです。当然、研修日当なども止まりますし、ホテルからすぐに出て頂きます。

我々すいません。え!  配属先は決まってるんですか?

高森次長JR上野駅近くにあるJR上野入谷口です。

氏家え?  東京に戻れるんですか?

高森次長いえ、戻るではなく異動です。全国転勤が原則、忘れてませんよね?

氏家あ、はい、覚えています。

高森次長お二人が警察を呼んだとしても、我々の安井支配人への評価は変わりません。長い実績があります。結局、お二人だけが損をします。

え?  そうなんですか。そんなめちゃくちゃな、また被害者だけが出ますよ。

高森次長結果的に、お二人は別のホテルでも研修することは変わらないでしょ。ならば、他の研修先に行きましょうよ。

他の店舗で研修は続けてもらえるんですか?

高森次長もちろんですよ、私はお二人を高く評価しています。まず、本町(研修センターのこと)に戻りましょう。本町に戻っても、このことは口外しないで下さい。お二人が口外すると、失格にすることになります。あとは追って指示しますから、この件は忘れて下さい。

我々わかりました(しぶしぶ了承する)。

我々は、高森次長より失格をほのめかされ、しぶしぶ警察への被害届を断念せざるを得なくなりました。高森次長とは、喫茶店で別れて我々は研修センターに戻りました。

今になってみると、業務委託が運営する店舗でスーパーホテル社員は働いているし、我々は不明な契約関係で派遣され、業務委託支配人の指示のもとに働いていました。高森次長は、警察への被害届を恐れていたのではありませんでした。労働基準法の脱法的実態の発覚を恐れていたのです。

研修センター社員との最後の交流

「研修センター」の社員たちは、我々が何も言わないのに事情を知っているようでした。この日の勤務は、13時~25時のシフトです。社員Aさんと夜間警備員さんが夜間勤務でした。

7月27日研修センターに戻った証拠

7月27日、研修センターに戻った証拠

我々は勤務が終わり、氏家さんが気を利かせて、1階のコンビニで“差し入れ”のコーヒーとお菓子を買って、我々も夜間勤務の仕事を手伝いました。深夜2時ごろまで、4人で仕事しながら話しました。

社員Aさんは「安井支配人が24時の営業終了後、シャッターを閉めたフロント裏で研修生と宴会して、大騒ぎして宿泊客から大クレームになった」という社員だけが知る秘密を教えてくれました。また、夜間警備員さんは「深夜24時に引き継ぎをしたが、人に屈辱を感じさせる言い方の支配人」だったと言っていました。

社員Aさんと夜間警備員さんは、安井夫妻のひどい接しかたでは、アルバイトがみな辞めて、倒れるほど「夫婦が働き詰め」となるのは当然の帰結だと言っていました。だから、落ち込むことはないと我々を励ましてくれました。

この日の研修レポートには、「渡邉さん本町へお帰りなさいませ!  本日は遅くまでありがとうございました (中略) 私たちは全く迷惑などと思っておりませんので」とありました。

7月27日の研修レポート

7月27日の研修レポート

そのあと、7月31日、最後の「接客テスト」に合格しました。翌日の8月1日、我々は、東京へ戻る新幹線の乗客となっていました。

最後の「接客テスト」採点結果

最後の「接客テスト」採点結果

証拠・資料

最後の「接客テスト」採点結果