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24時間無休労働させるための引越し #4

「今後の予定A」の通り、調印式の終了後すぐの2018年9月15日は「荷入れ」でした。荷入れとは、文字通りに自分たちの“荷物”を運び“入れる”ことです。翌日から「引継業務」がはじまるので、生活の準備はこの1日しかありませんでした。

「今後の予定A」氏家さん・渡邉ペア スケジュール(変更計画)

「今後の予定A」氏家さん・渡邉ペア スケジュール(変更計画)

私がホテル正面玄関を入ると、スーパーホテルコンサルタント本部業務サポートグループ社員の江口さんが待っていました。彼は、店舗を我々に引き継ぐ担当者だと自己紹介しました。我々は、江口さんと挨拶をかわし、彼に案内されて「居住スペース」にはじめて足を踏み入れました。

じつは、この日まで業務委託店の“居住スペース”を見たことがありません。当然、JR上野入谷口の“居住スペース”を見るのも初めてでした。

氏家さんは、住居スペースを見て、「何で防犯カメラのモニターがあるの!電話まであるけど・・・どうして? 」と言いました。私は、奥の部屋に行きます。すると、防災受信盤や警報設備、緊急用外線と内線の電話などが壁にありました。

“居住スペース”に設置された固定電話

“居住スペース”に設置された固定電話

そこは“居住スペース”ではなく「宿直室」だった

“宿直室”は、24時間の交代勤務で働く従業員の休憩する場所です。夜間に電話が鳴るし、不審者を防犯カメラで監視する必要もあります。火災などの災害に対応する警報装置もあり、「24時間体制で見張れ」ということだったのです。覚悟はしていましたが、休むことさえ許さない状況で働くことを強制されることになったのです。

宿直室の簡単な間取りを紹介します。

鉄製の頑丈な防火戸の玄関を入ると、大人が1人立てる幅しか入り口のスペースがありませんでした。この狭いスペースをさらに狭くする大きな下駄箱があります。たくさんの従業員の靴を収納するため、通路スペースが狭くなっていました。

宿直室の出入口

宿直室の出入口

水道水がとにかく悪く、トイレの便器が3日くらいで黒ずむほどです。お風呂のお湯は、ずっと茶色くにごった状態でした。また、床はクッション性のあるビニール製シートが張られていました。その模様は木目調で、数ヶ所、たばこの焦げあとがあります。

宿直室は、事務室とフロント、朝食準備室と接していました。そのため、ロビーで大きな声や話し声がすると宿直室まで聞こえます。また、フロントの戸棚を開閉する音がとても大きく響き、天井から「ドスン」と音が聞こえました。

窓は、奥の部屋に1つあり、開けると白い金網フェンスです。フェンスの向こうには、四方をビルで囲まれた空間でコインパーキングとなっていました。パーキングに駐車する車がアイドリングすると、音が響いて排気ガスと一緒に室内に入って来ます。

宿直室の奥の部屋にある唯一の窓
宿直室の奥の部屋にある唯一の窓

早々に制服や着替え、布団の準備などですぐ終わってしまいました。映像では、たくさん物があるように思えますが、飲料水の段ボールと書類、衣類くらいしかありません。

業サポとの引継業務

今後の予定A」の通り、2018年9月16日~18日深夜0時まで「引継ぎ業務」となっていました。我々は、引継業務のことを“ホテルを引き継ぐ”業務なのだと思い込んでいました。しかし、あとになって実際は、まったく違う業務が3日間で行われたことに気がつきます。

「業サポの担当業務B・C」こそが、本当の役割となる「労働実態の捏造」でした。

業サポの担当業務

  1. 「管理者不在のホテル」の運営
  2. ホテルの「引き取り・引き渡し」を行う
  3. Bに付帯する公的届出の手続き

スーパーホテルは「昭和60年報告」の6項目のうち、(4)(5)(6)を不適合にする「我々の公的届出の状況」を確認することが「業サポの担当業務B」の業務です。その証拠が「スーパーホテル引継書類」の「引継ぎ項目チェック表①」にあります。チェック表の「後任支配人・副支配人」の①~⑪について、江口さんが我々に確認して完了予定日を記入して、氏家さんに印鑑を押すよう求めました。

そして、江口さんは「業サポの担当業務C」の業務をチェック表の「3各種申請・契約・変更・解約届等引継」において届け出ています。おそらく江口さん本人も「②消防計画変更届」を消防署へ勝手に届け出ることは違法行為だと知っていたはずです。しかし、スーパーホテルの命令で社員業務として実行していたようです。

本来は、管理権原者(スーパーホテル)が防火管理者(氏家さん)を選任したら「①防火管理者変更届」を出すことになっており、選任された防火管理者(氏家さん)は「防火管理上必要な業務を行う権限」を管理権原者(スーパーホテル)が付与する法律ともなっています。

たとえば、防火管理者(氏家さん)にはホテル運営に「必要な予算・体制構築」などの権限があるだけでなく、消防法の義務である「消防計画作成と届出」を行います。江口さんが消防計画を勝手に届け出ることは、あり得ない消防法の違反行為なのです。

また、我々がのちに入手した「消防計画作成(変更)届」には、江口さんが「氏家さん」の名前を書き込み、氏家さんの印鑑を勝手に押していたことも判明しています。さらに業務委託契約の開始前の「9月18日」が届出日となっており、業務委託契約の開始前の日付となっていました。しかも、消防計画が規定されたのは「平成23年10月21日」で、氏家さんが作成していれば、平成30年9月19日以降となるはずです。約7年前のものを使いまわしていました。

店舗アルバイトのリストを引き継ぐ

驚くことに業サポによって、アルバイト6人の勤務は、我々の業務委託契約が開始される9月19日以降の月末までシフト勤務表が作られていました。そればかりか「SHJR上野入谷口アルバイト面談リスト」なるものがあり、勤務日や時給、性格などがリストになっていました。別に履歴書も渡され、全員との面談と雇用を約束させられます。

この引き継ぎシステムは、「昭和60年報告」を悪用した偽装の確認だけでなく、全チェーンに隈なく我々のような業務受託ペアを配置する「異動」のために作られたものでもあります。

業務委託の支配人・副支配人は「異動」がある

スーパーホテル業務委託契約には、さまざまな驚くべきものがあります。その1つが、スーパーホテルの指示で「異動」があったことでした。全国のスーパーホテルに店舗のアルバイトを残して転勤しなければなりません。スーパーホテルの「命令」でホテルからホテルへと住民票(個人事業主の事業所の住所)を移動させる強制移住なのです。

支配人・副支配人「異動」のしくみ

支配人・副支配人「異動」のしくみ

2019年10月23日、中本係長は「異動の内容」について、我々に説明しています。

同年12月10日スーパーホテルコンサルタント本部東日本エリアの北村課長は、「異動って基本的にはある話じゃないですか」と発言しています。

異動を断れば、ほとんど無一文の状態でホテルより追い出されます。契約書を見れば、いかようにもできることはすでに紹介した通りです。高額の賠償請求の脅迫のため、肉体の限界まで働き続けるしかありません。あとは野となれ山となれという心境が業務委託の支配人・副支配人の本音だと思います。

事実、我々はスーパーホテルの指示に従わないことを理由に暴力でホテルから追い出されています。もはや「独立」した事業者ではなく、労働関係法令の適用権利を失った「社員」としか言いようがありません。

SUPERWARE15(スーパーホテル社内管理システム)の「回覧板」の「支配人・副支配人着任のお知らせ」には、毎月に異動や新任の業務委託の支配人情報が発信されています。しかも「異動」の引越しは、スーパーホテルが負担するマニュアルまで存在します。

店舗と着任予定日が記載されています。「※新人の支配人・副支配人です」というもの。または「※富士インターより異動。」というものは、社内異動としか思えませんでした。

これ以外にも消防公文書の開示請求を行った結果、スーパーホテル業務委託契約書が添付されていた店舗を発見します。4年や1年という年単位どころか1年と26日という端数のある契約書でした。確認できたページの内容は業務要項ばかりですが、我々のものと同じです。

ただし、ホテル業務委託契約書の社内コードは「個人③(異動)」となっており、我々の「個人④(新人)」に対して、「異動」専用の契約書を示す括弧書きの違い、さらに番号は契約時期からバージョンを示すことがわかりました。そして、業務要項の社内コードは「VEN契③業務要項(個人)」であり、我々の「VEN契⑥業務要項(個人)」は、サンプル業務要項が「VEN契⑤業務要項(個人)」だったので、やはり番号は契約の度にバージョンアップして更新していることを示しているようです。

ちなみに消防計画は、使い回した我々の店舗とほとんど同じものでした。夜間の防火体制には、夜間巡回と宿直日誌の作成がありました。おそらく宿直日誌はないでしょう、スーパーホテルから夜間は就寝するよう指示されているからです。

驚きの「安さ」と「仕事量」が課される

後日、氏家さんが銀座チームのシフト表から総人件費などを試算しました。

すると驚くべき「安さ」と「仕事量」が我々に課せられていたことが発覚します。スーパーホテル社員だけで運営される店舗を「社員運営店」と呼びたいと思います。

まず、「社員運営店」の月間人件費と年間人件費を試算しました。

社員運営時の人件費は我々の委託報酬の「3.5倍」もあったのです。

比較

我々の委託報酬と社員運営の人件費比較

さらに銀座チームのシフト表から「時間帯別人員配置」を見ると、ほぼ2名常駐体制が構築されていました。24時間に配置した延べ人数は「69人」です。

「社員運営店」の時間帯別人員配置の状況

「社員運営店」の時間帯別人員配置の状況

それに対して、我々の場合は2名常駐体制を構築するのに、委託報酬(1年目)が最低賃金換算で40%も不足していました。

つまり、2名常駐体制の60%分に当たる延べ人数の「28.8人(24時間×2人×60%)」しか配置できないのです。我々が時間あたりにこなすべき仕事量は、社員運営店のおよそ「2.4倍(69人÷28.8人)」も多いことがわかりました。整理すると、次の通りです。

社員運営店の「およそ1/3以下」の時給で、仕事量は「2.4倍」も多い

この調査結果のおかげで、我々は自殺行為のようなアルバイトの賃上げをしていたようです。じつは、スーパーホテルが直接雇用するアルバイトをすべて同じ時給で引き継がされました。その時給は、平均すると1,100円以下です。しかし、上野地区の相場は1,350円でした。このままだと熟練したアルバイトが辞めて行くことが予想されます。

そこで19時間30分のシフト業務を我々が毎日こなし、さらに無理をして週2回は我々だけのフロント業務を行うことにします。これにより余った人件費によって、平均30%くらいまでアルバイト全員を昇給させます。氏家さんが雇用したアルバイトのタイムカードからフロント業務の人員配置を調べました。すると、553日のうち「127日間」も我々だけでフロント勤務していたことがわかったのです。

我々だけのフロント業務日数一覧

我々だけのフロント業務日数一覧

消防法違反に立脚するスーパーホテルの安全を無視した委託報酬によって、我々二人は「殺人的監禁状態での重労働」に置かれていたことが判明しました。

強制労働は助けを求める体力さえ奪う

スーパーホテルの子会社スーパーホテルクリーン(以下、クリーンと略します)のメチャクチャな仕事によって、我々は無休労働のうえに仮眠すら取れない状況に置かれました。それは、同じ下請の事業者の仕事の責任をすべて「クレーム対応」という名で、我々が処理するためです。

中小企業庁の「下請法申告」した際、清掃クレームの発生件数を調査しました。すると、150日間で94回もあったのです。ほぼ毎日クレームがあると言える状態でした。

クレーム発生統計(公取提出資料)

クレーム発生統計(公取提出資料)

宿直室に住み込んだ24時間対応の仕事なので、クレームとなれば、氏家さんだけで対応できない場合が出て来ます。寝ている所を起きて、私も対応することになります。私の睡眠時間は、3時間ない日が続きました。氏家さんも同じです。

クリーンの清掃員たちは客室の荷物があるなか、全室ドアを開けたまま清掃作業を行い、連日の貴重品紛失で警察を呼ばれる状態でした。

しかもクリーンの清掃員たちは、全館禁煙のホテルでタバコをふかしながら仕事をしています。清掃現場責任者が率先して、タバコをふかして仕事していました。我々が客室巡回などで見つかりそうになると、清掃員たちは避難バルコニーから近隣マンションの敷地などへ投げ捨てて、その場をしのいでいました。結局、タバコに火をつけたままゴミ袋に捨てた清掃員を氏家さんが発見して、ボヤを消化したことをスーパーホテルに猛抗議しました。

しかし、ホテル敷地周辺は、セブンスター(たばこの銘柄)だらけで改善されませんでした。ビニール袋横にセブンスターの吸い殻があります。その拡大写真が真ん中の写真です。右は昼間に拾ったものです。

写真のように避難経路の1つがゴミの集積場所となり、避難できない状態でした。スーパーホテルが清掃委託するクリーンが勝手に集積場所を決めているためです。火災時、ゴミに避難路が塞がれて危険です。また、クリーンの清掃員たちによって、消防器具がゴミ箱扱いされ、いくらゴミを取り出してもゼロにはなりませんでした。消防法上の防火管理者の権限は、スーパーホテルにより完全に剥奪されています。

ただ1つの理由、安全を無視した違法な委託報酬にするためでした。宿泊者や近隣住民、従業員の命などスーパーホテルは気にかけていません。

正しいことを主張すると、スーパーホテルや子会社クリーンより報復があります。それは客室清掃しないで帰ってしまい、我々が深夜に客室清掃することです。夜22時以降は、フロントには氏家さんしかいません。アルバイトの賃金を深夜割増で払えなかったからです。私が寝ている所を起きてフロント業務をし、氏家さんが客室清掃しました。

特に長期滞在の宿泊客を狙う嫌がらせが続きます。金品紛失や衣類を丸ごと捨てたり、客室のお菓子を食べてお客がフロントに食べ残しを見せに来るなどキリがありませんでした。こうしたクレームは繰り返しになりますが、「22時頃~深夜2時」くらいに集中します。

我々には、業者を決めることはできません。いつまでも事件は続きます。

毎日の睡眠時間が3時間程度の無休労働となり、「死の恐怖」から公正取引委員会に「下請法違反」の申告で救済を求めました。この中小企業庁への「下請法申告」も、さらなる死の恐怖を煽るものでした。

300日以上の不眠不休で疲れ果てるなか、氏家さんが申告書を書いて送るまで、私が代わりにフロントに立ちます。助けを求めることすら「死を覚悟して無理に働く」ような二重苦となりました。

彼が申告書を書き始めたのは、2019年7月8日のことです。それからちょうど1週間後の7月16日に申告が完了しました。

申告内容は、氏家さんが必死に書いたものですが、今見返してみると恥ずかしくなるようなものです。これができる精一杯でした。同社が勝手に決める「時給の問題」について下請法の「下請代金の減額の禁止」とし、その命令について「書面化としない」ことを下請法の「親事業者の義務」として書きました。

そして、委託報酬の「同社の一方的価格設定」とあることを下請法の「買い叩きの禁止」の発注単価とし、殺人的な無料奉仕する清掃クレームの対応について「不当な経済上の利益提供要請の禁止」として書きました。

特にクリーンによる清掃クレームについては、2019年2月1日~6月末までの「150日間」の清掃不良の件数を調査して発生頻度を判明させて申告します。

我々は「下請法の申告」がダメだったと直感で思い、案の定、8月22日ごろ公取の「近畿中国四国事務所長」名で下請法には当たらないとの通知書が来ました。

公正取引委員会の通知書

公正取引委員会の通知書

予備知識もないなか、氏家さんが必死に書きました。しかし、よく考えると下請法の対象事業に我々が当たっていないようでした。すなわち、サービス業は「再委託された業者」が対象だったのです。このことは相当あとになって知りました。

要するに「名ばかり個人事業主」とされると、政府が言うような「フリーランスガイドライン」や「下請法や独禁法」は意味を成しません。誰にも助けてもらえず、我々はスーパーホテルの高額賠償の請求に怯えて仕事を放棄できず、ただ“死ぬまで無休で働く”以外に術がなかったのです。

証拠・資料

スーパーホテル引継書類

スーパーホテルJR上野入谷口運営参考資料書類

スーパーホテルJR上野入谷口消防計画等

支配人・副支配人着任のお知らせ(2016年~2019年9月)

開示請求で入手したスーパーホテル業務委託契約書等