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グローバル経済を無視した政府の奴隷制容認 #8

法制度に「強制労働」を事実認定させた伊藤岳議員

裁判提訴後、我々はスーパーホテルJR上野入谷口の「消防計画(2018年9月18日届出)」を開示請求で入手しました。すると、夜間常駐どころか「我々だけの24時間365日勤務」をスーパーホテルは届けていたのです。しかも、夜間は「宿直員」を配置し「夜間巡回」と「宿直日誌を記入する」ことが定められていました。

消防法では、防火管理者(氏家さん)に「防火管理する権限」が与えられており、そのなかの「消防計画の作成・届出」が氏家さんの義務です。しかし、スーパーホテルが勝手に消防計画を作成し、届け出ていました。あたかも我々が届出たと思わせる消防計画によって、火災時の責任を我々に押し付けています。さらに我々が自発的に「我々だけの24時間365日」の防火管理する常駐体制を構築していたと偽装されました。

スーパーホテルの研修では、フロント営業終了の24時から翌朝5時30分の朝食準備まで「就寝時間」だと指示されて来ました。事実、スーパーホテル社員が運営する「研修センター」、派遣された業務委託の支配人らが運営する「研修委託店」でも夜間は就寝でした。それ以外にも、「スーパーホテル業務要項」の末尾のワークスケジュールやサンプル契約書開示で渡されたワークスケジュール、どれを見ても前記した時間帯にはタイムスケジュールの時間さえ表記されていません。

さらに「夜間就寝」だとスーパーホテルの求人もありました。これは明らかな「求人詐欺」です。フロント業務終了の「24時~朝食準備5時30分」まで就寝時間なのです。

夜間就寝の記載があるスーパーホテルの求人(マイナビ転職より)

夜間就寝の記載があるスーパーホテルの求人(マイナビ転職より)

我々は、スーパーホテルJR上野入谷口以外のホテルについても調査します。2020年12月末現在の158店舗について、消防公文書の開示請求を全国105市町村に行い、148店舗分の消防公文書を入手しました。つぎのような衝撃的な結果が判明します。

支配人・副支配人だけの365日24時間勤務の防火体制、88店舗発覚

148店舗分の消防公文書調査結果のページ

全国158店舗の運営状況調査結果のページ

開示請求したホテルの60%に当たる88店舗は、我々の場合と同じでした。人間には不可能な「24時間無休」で働く体制が届出られていたのです。しかも、消防計画を防火管理者の氏家さんにスーパーホテルは知らせず、夜間就寝だと教育指導しておきながら、消防計画には「夜間巡回」と「宿直日誌を記入」を定めていました。なお、スーパーホテルJR上野入谷口の避難経路の封鎖は、2022年7月4日の写真の通り是正されていません。

避難経路がゴミで塞がれているスーパーホテルJR上野入谷口(2022年7月4日撮影)

避難経路がゴミで塞がれているスーパーホテルJR上野入谷口(2022年7月4日撮影)

2022年3月16日参議院総務委員会において、伊藤岳議員は「雇用労働者が従事する前提の消防法制度の問題点」をするどく指摘しました。つまり、業務委託した防火管理者(氏家さん)の権限がないこと、スーパーホテルが消防計画を勝手に消防署へ届け出て「名ばかり選任できる」実態などについての質問です。

この伊藤岳議員の指摘に対して、総務大臣及び消防庁次長はスーパーホテルの対応を「違反」だと答弁します。しかも「我々だけの365日24時間の防火体制の勤務」が存在することを事実認定しました。

雇用によらない働き方が防火管理制度に影響を及ぼす問題を未然に防ぐため、伊藤岳議員は重く受け止めるよう総務大臣並びに消防庁に質問したそうです。第二の「ホテルニュージャパン火災」や「歌舞伎町雑居ビル火災」のような大惨事の原因と同じだったからでした。

伊藤岳議員の指摘は、上野労基署が「事業者扱い」する根拠をも消滅させます。それは、佐々木繁労働基準監督官のつぎの回答でした。

スーパーホテル本部からいわゆる積極的かつ厳格にですね労働時間を管理把握されていたわけじゃないんじゃないかと。 (中略) 労働時間を管理把握されていたとまではちょっと判断できなくてですね、これが一番大きな点で、これによってちょっと実態としても労務の提供そのものが契約の目的だったとは言いがたいという判断になりまして。それで最終的に、いわゆる使用従属性ですね、支配人・副支配人さん達の使用従属性に、今まで述べたように若干こう疑義が残ったんで、労基法上の労働者とまでは断定できなかったという最終的な判断になりました。

つまり、「昭和60年報告」の6項目のうち、(3)の場所的・時間的拘束がスーパーホテルによって労働時間の管理があると判断できなかった。そのため(1)(2)(4)(5)(6)に疑義が残った。ゆえに「労働者」と断定できなかったから「事業者ではなく事業者扱いをする」ことにしているのです。

昭和60年報告の労働者判断基準(6項目)

  • (1)業務指示などが拒否できない
  • (2)業務遂行上の指揮監督がある
  • (3)場所的・時間的拘束がある
  • (4)業務を代行できず誰も雇用してない
  • (5)報酬が社員と大差なく欠勤控除などがある
  • (6)補完的要素(事業者性、専属性など)

伊藤岳議員の指摘によって、スーパーホテルが強大な労務管理として、「我々だけの365日24時間のホテル内勤務」となる防火体制を法的に義務づけていたこと。また、スーパーホテル自身が消防計画を届け出た事実があること。これらの事実認定により(3)の時間的・場所的拘束が判明し、残り5項目を含めて総合的に「労働者」だと判断できるようになりました。

日本の労働行政という「暗黒の世界」に一筋の光が差し込んだのです。

時給619円で年間2億円以上を稼がせる脅迫の構造

そもそも株式会社スーパーホテルにとっての「スーパーホテル」って、何でしょうか。それは、「不動産投資商品」なのです。たとえば、スーパーホテルJR上野入谷口の最終的オーナーは、ソフトバンクの孫正義さんです。米国子会社のさらに子会社のさらに・・・というように資本がつながっており、ご本人も全く知らないはずです。不動産投資商品は、J-REITによって「金融商品」となり、グローバル経済に直結しています。すなわち、日本政府が行う国内の悪法は海外まで波及するのです。

労基署の「昭和60年報告」による判定の影響は、「スーパーホテル FC(フランチャイズ)オーナー募集」のページに、つぎのような言葉で表現されています。

チェーンメリットによるローコスト(仕入れ等)オペレーションの実現などの確かな実績と豊富な経験から、高収益事業の全面サポートをお約束させていただきます。

スーパーホテルFC(フランチャイズ)オーナー募集サイト

スーパーホテルFC(フランチャイズ)オーナー募集サイト

要するにFC店舗の運営を人件費の高い社員ではなく、スーパーホテルの「業務委託の支配人・副支配人(ベンチャー支配人)」を異動させて、安くこき使い「高収益をお約束させていただきます」と言いたかったのでした。

この不動産投資商品を「店舗収支表」から読み解きたいと思います。金額単位は千円となっており、「平成29年12月からの1年間」の実績を表の最上欄「29年(a)」と記載された部分に合計が出されています。この期間は、スーパーホテル社員の銀座チームや社員偽装した業サポが運営、それに我々のおよそ3ヶ月の運営が含まれています。これに対して、「平成30年12月からの1年間」は我々だけの運営となっており、表の最上欄の「30年(b)」に合計があります。

スーパーホテルJR上野入谷口の店舗収支表の「30年(b)」

スーパーホテルJR上野入谷口の店舗収支表の「30年(b)」

まず、店舗収支表を見る前にスーパーホテルが不動産投資商品であるがゆえに、つぎのようなセールスポイントが必要だったことを紹介したいと思います。

少額投資(売上規模)と確実なテナント収入(運営方法)の約束です

「少額投資」だと不動産オーナーに売り込むには、なるべく少ない客室数に設定する必要があります。それは、「売上規模」が客室数に依存するからでした。すなわち、客室数の増大と建物の規模やコストは比例するからです。当然、投資額を小さくすれば、少ない客室数のホテルになります。

実際に大手ビジネスホテルチェーンと比較してみると、1店あたりの客室数が「2倍」もありました。この2倍の差とは、1店あたりに稼ぎ出せる売上限界値の差でもあります。

客室数の比較

客室数の比較

スーパーホテルJR上野入谷口の「客室69室」は、最も客室数が少ないホテルに分類されることが判明しています。スーパーホテルの建設推移を見ると、110室未満が大半を占めているからでした。

客室別ホテル建設の推移

客室別ホテル建設の推移

「確実なテナント収入」とは、スーパーホテルが不動産オーナーに約束する「長期一括契約(20~30年)」のことです。この契約に説得力を持たせるのは、ブランド力や社会的評価だけでなく、「ベンチャー支配人制度」という差別化した「運営方法」でした。

この運営方法は、「昭和60年報告」を悪用した強制労働でした。すなわち、現代奴隷制によるホテル運営です。高額賠償で脅して宿直室への住込みという24時間対応の監禁状態から人件費を減らします。そして、少ない客室数にもかかわらず、売上ノルマに達しないと業務不履行だとして高額賠償で脅迫するものです。

こうしたことを店舗収支表から読み解くことができます。我々が運営した「30年(b)」の合計を見て行きたいと思います。

高額賠償で脅して24時間の勤務を無休で行わせた効果が「(原)管理委託料」の欄に「12247千円」と我々の委託報酬がありました。驚くことに「業務委託料送金案内兼支払明細書」の振込額や支払額合計のどれとも金額が合わない不思議な書類でした。

実際、同期間に支払われた銀行入金額だと「12624千円」です。消費税を差し引くと「11650千円」なので少なくなります。この金額より時給換算すると「619円=1,084万円÷365日÷(17時間+7時間×1.25深夜割増)÷常時2名体制」でした。売上が少ないと業務不履行だとして、売上損失を賠償請求する脅迫を行います。これは事実上、売上保証を我々にさせているのです。時給換算619円でこうした強制労働における脅迫は、とても有効です。

我々は「H30.11」~「R1.8」」までの10ヶ月、「稼働率」が100%以上の販売を行っていました。簡単に言うと、スーパーホテルJR上野入谷口の69室が10ヶ月間、毎日満室だったことを示しています。満室というのは、スーパーホテルにとっては儲かるので嬉しいことです。しかし、宿泊者だけでなく緊急時の対応としては「ルームチェンジ」や「客室予備」のない最低の運営状態と言えます。

驚異の運営というより異常なことです。それは「支配人ライセンス評価表」の売上ノルマで、昨年対比100%以上の利益を出す義務があるからです。高く売れなくとも、毎日満室でないと言い訳ができません。スーパーホテルのすべての業務委託の支配人・副支配人は、毎日、満室にすることが義務で追い立てられていました。

我々も2018年9月19日の業務委託契約の開始からすぐ中本係長に「売り切る」よう命じられています。下の表は、極端に短い40日ほどで稼働率100%が強制されているのがわかります。

月累計稼働率と順位

月累計稼働率と順位

彼が担当するエリアの全店に一斉送信した「【3月度】エリア満室達成日設定」というメールが毎月来ます。メール本文には「2018年度下期3月」と書かれていますが、2019年2月25日に送信されたメールです。そして、満室達成日が近づくと、中本係長から「【10月13日(土)】首都圏エリア満室達成日」というようなメールが来ます。

さらに電話などで「売り切る」よう言われます。基本的にスーパーホテルの社員は、突然ふらっと予告なくホテルに来訪します。我々の予定など聞きません。聞く必要もなく、いつも働かせているからです。実際、氏家さんが満室命令されていた日を調べると、347日のうち108日(全体比31%)も満室を指示されていました。下の表は、裁判証拠のため「被告」となっていますが、スーパーホテルのことです。

「えるぼし」企業に認定(2016年)株式会社スーパーホテル Lohas Report2018より

スーパーホテルが設定し命じた「満室達成日」の一覧

毎日、「全店稼働率表①」で売り切り順位をつけられました。満室にできない業務委託の支配人・副支配人を見つけるためです。この表の「当日」は、各ホテルの当日の客室が売れた割合(稼働率)を示しています。また、「月累計」は各ホテルの月間平均の稼働率となっていました。その「当日」を見ると、稼働率142.06%とあります。「部屋数」は233室なので、98室も1日に2回宿泊した計算になります。

ノルマをクリアできないと、我々はスーパーホテルより解除されてホテルより追い出されます。事実、その通りとなりました。

月累計稼働率(裁判資料:乙27号証より)

月累計稼働率(裁判資料:乙27号証より)

スーパーホテルの指示の通りに、我々が店舗運営すると自動的に費用計上された合計が「原価 計」となります。それから「売上総利益」と「固定費合計」と「本部経費」を差し引くと、「営業利益」の28251千円となります。

しかし、我々を雇用労働者として銀座チームの「総人件費37729千円」と「(原)管理委託料」に置き換えれば、「営業利益2769千円」に激減します。

当初の営業利益の1/10まで減少します。しかも客室の稼働率は99.6%と高く、1室あたりの販売価格を上げるしか増収の見込みが立ちません。けれども商圏内の供給が爆発的に伸びれば、1室あたりの販売価格を上げることも困難になります。しかし、前年比100%以下の利益になれば、我々が責任を取らされて済ませます。

上野地区の客室需給の推移

上野地区の客室需給の推移

要するにスーパーホテルJR上野入谷口の「69室」という極端に小さな売上規模でも、スーパーホテルが利益を出せるように我々は強制労働に服していました。それを示すのがこの「店舗収支表」なのです。

戦前のソーシャルダンピングで投資を募る日本

フランチャイズオーナーとなる以外にも「既存のホテル買収」という方法もあります。スーパーホテル(奴隷制ホテル事業)に世界から投資を集めてしまう「J-REIT」に関わる問題です。

不動産投資法人は、スーパーホテルの建物オーナーになるだけなので店舗内で行われる実態を知ることができません。スーパーホテルにだまされた不動産投資法人は、運営実態を隠されたままポートフォリオに組込まされます。

結果、J-REITを介して「日本版の現代奴隷制事業」が日本政府の後押しで、世界に販売されているのです。我々の調査では、インヴィンシブル投資法人3棟、投資法人みらい4棟、ダイワハウスリート投資法人1棟でした。投資額合計は約100億円、つぎのような被害状況となっています。

J-REITに含まれたスーパーホテルの店舗

J-REITに含まれたスーパーホテルの店舗

また、スーパーホテルの取引銀行であるメガバンクは、グローバル経済を支える大動脈として世界で活動しています。

スーパーホテルの取引銀行(スーパーホテルHPより)

スーパーホテルの取引銀行(スーパーホテルHPより)

日本政府が「労働力」を買い叩く、戦前のソーシャルダンピングで世界から資金を集めようとするなか、コロナの影響もあり欧米は「人権保護」が急速に進んでいます。

メガバンクは、日本政府の戦前の人権蹂躙するソーシャルダンピングに協力できない欧米の法律と板挟みになりつつあります。

たとえば、イギリスでは、現代奴隷法が施行されています。スーパーホテルのような「嘘」の求人広告で騙して、24時間無休の宿直室暮らしでホテルに監禁し、約3700万円もの高額賠償や住居からの追出しで脅迫して働かせる行為。我々の被害は、日本だと行政機関が2年経っても黙認するだけでした。

しかし、イギリスの2015年現代奴隷法には、暴力、脅迫または欺瞞によるサービス等の確保について、つぎの通り定められています。

英国【現代奴隷法3条5項】(暴力、脅迫、または欺瞞によるサービス等の確保)
当該者が、以下の行為を当該者にさせることを目的とする暴力、脅迫または欺瞞の対象とされている場合 

  • (a)あらゆる種類のサービスを提供する行為
  • (b)他者にあらゆる種類の利益を提供する行為、または
  • (c)他者が何らかの利益を得られるようにする行為
英国現代奴隷法3条5項の原文(抜粋)

英国現代奴隷法3条5項の原文(抜粋)

このうちのスーパーホテルは、(b)に該当すると思います。

スーパーホテルと取引する銀行のうち、上記の法律に該当する「日本政策投資銀行・三井住友銀行・三菱UFJ銀行・みずほ銀行」があります。そして、イギリスの現代奴隷法は、第54条1項に「奴隷及び人身取引」がサプライチェーン及び自身の事業で行われていないことを確保するための手順に関する声明を作成して、毎年発表しなければなりません。

また、オーストラリアにも現代奴隷法があり、その第13条により「現代奴隷報告書」を毎年大臣に提出する義務があります。

前記の法律を制定するイギリスやオーストラリアでは、総務委員会での消防庁次長の答弁、さらには高額賠償の脅迫による強制労働と移住、妊娠解除などスーパーホテル業務委託契約で明文化された事実は大問題となるはずです。

こうした「脅迫・欺瞞・暴力」によるサービス等の確保が犯罪とならない珍しい国が日本なのです。言い換えると、政府を構成する政治家の人権意識の低さ、引いては日本の文明水準の低さを露呈させているのです。

我々は、改めて人権と法治国家について考える必要があると思います。

証拠・資料

全国158店舗の運営状況調査結果

店舗収支表

労働基準法の「労働者」の判断基準について